腎臓高血圧内科ブログ

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6/1

2018

Q&A①(5月21日の講義のポイント)

学生の皆さん、お疲れ様です。

第1回目のQ&Aコーナーいってみましょう。

 

 

Q. 糸球体濾過率(GFR)の定義は?

A.
一分間に血液尿関門で濾過される血漿の体積です。一分間当たりの原尿の産生量と言い換えても結構です。原尿のほとんどは尿細管で再吸収され、その割合には幅がありますので、実際に排泄される尿を測定してもGFRを推定することはできません。GFRを知るためには後述するクリアランス試験を行うか、溶質の血漿濃度とクリアランス検査結果の回帰式から求めたeGFRを用いるしかありません。

 

 

 

Q. クリアランス検査の意味は?

A.
実測することが不可能なGFRを推定するための手段です。

100%糸球体で濾過され、かつ尿細管で再吸収も代謝も分泌もされない物質をXとします。Y分間にXの血中濃度が一定であったとき、血漿X濃度をPX、Y分間の蓄尿中のX濃度をUX、その体積をUVとすると、XのクリアランスCXは、

 

CX (ml/min)=UV x (UX/PX) ÷ Y

 

で示されます。UV÷Yは一分当たりの排尿量です。この尿は原尿が尿細管で濃縮を受けてから排泄されたものです。Xが100%糸球体で濾過されるならPXは原尿中のX濃度に等しいはずであり、これが尿細管内で再吸収も代謝も分泌もされなければその濃縮の結果がUXに示されるのですから、逆に元の体積を求めることができるようになるのです。

理想的なXに近い物質はイヌリンであるとされ、このためイヌリンクリアランス試験が今日でもGFR測定のゴールドスタンダードです。しかし、実際にイヌリンクリアランス試験を行うことは簡単ではないので、ベッドサイドでは多くの場合必ずしも理想的なXとはいえないクレアチニンのクリアランスで代行されています。
Q. 腎臓で分泌されるホルモンは?

A.
ホルモンとは特定の臓器・組織で産生され、内分泌によって循環血漿中の濃度が上がり、これに対して特異的な受容体を持つ遠隔臓器の細胞と結合して生理作用を発揮させる液性因子です。腎臓では傍糸球体上皮細胞からレニン、腎間質細胞からエリスロポエチン、(近位)尿細管上皮細胞から1,25(OH)2ビタミンDが産生されます。腎臓で産生される1,25(OH)2ビタミンDは「ビタミン」という名前ですが、腎臓で産生され、血流に乗って運ばれ、ミネラル代謝に関連する遠隔臓器で生理作用を発揮するので、定義上は「ホルモン」に分類されます。なお、1,25(OH)2ビタミンDは腎臓外でもマクロファージなど多様な臓器で産生されていますが、腎臓外で産生された1,25(OH)2ビタミンDは遠隔臓器ではなく産生臓器周辺の局所で作用を示すのでホルモンであるとは見做されません。

 

 

 

Q. GFRが高いと腎が障害されやすいのはなぜ?

A.
GFRとはネフロンの総数と一つ一つの糸球体の濾過率(SNGFR)の積です。GFRが高い場合、ネフロン総数が多いことがその原因なら問題ありませんが、そうでない場合はSNGFRが高いことを意味します。SNGFRは、糸球体管内の静水圧(PG)、膠質浸透圧(πG)、ボウマン腔内の静水圧(PU)、膠質浸透圧(πU)、及び血液尿関門の物理的透過性を示す定数をκとするとSNGFR=κ{(PG-PU) -(πG-πU)}によって示されますが、このうち生理的に最も調節されやすい要素がPGであり、したがってSNGFRが高い場合はほとんどPGが高いと考えて良いでしょう。これは糸球体内高血圧を意味するわけですから、それだけでも糸球体障害をきたしやすいとは考えられます。更に、SNGFRが上昇するということは濾液に輸出細動脈の血流がスティールされるわけですから、その下流で還流されるべき尿細管が組織虚脱による障害を受けやすくなります。以上から、SNGFRの上昇は、短期的にはGFRを上げますが、長期的には腎障害を進行させてGFRが低下する危険が高いと考えられます。

 

 

 

Q. Na利尿と水利尿の違いは?

A.
原尿量は圧倒的に多いので、生理状態ではヒトは尿を濃縮しています。この濃縮機構を抑制することが利尿作用であるといえます。尿の濃縮は浸透圧調整系を介した抗利尿ホルモンの分泌によって調整されています。尿細管におけるNa再吸収を抑制すると、Naは細胞外液の主要な浸透圧規定因子ですから、血漿浸透圧が低下します。これを鋭敏に感知した浸透圧受容体からの刺激によって下垂体からの抗利尿ホルモン分泌が低下し、これによって尿量が増加します。最終的にはNaの喪失に見合う分だけの血漿浸透圧レベルで平衡に達しているわけですから、結局失われたのはほとんどが細胞外液ということになります。水の過剰摂取に伴う水利尿の場合、やはり血漿浸透圧の低下に伴って下垂体からの抗利尿ホルモン分泌が抑制され、尿量が増加します。ただし、このとき溶質の喪失は伴っていませんので、水を喪失した分だけ細胞外液の浸透圧が上昇します。そこでこの二者の浸透圧格差がなくなるまで細胞内液から細胞外液に水が移動します。すなわち、細胞外液と細胞内液の両方が失われる結果になるのです。Na利尿も水利尿もどちらも集合管への抗利尿ホルモンの作用が抑制されることで尿量が増加するのですが、その水の出どころが異なっていることには注意を要します。

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