- 体液調節系の2つのシステムとは?
- RAA系が血圧を上昇させるメカニズムは?
- 交感神経緊張はなぜ血圧を上昇させる?
体液は浸透圧調節系と容量調節系の2つの独立したシステムによって制御されています。視床下部にある浸透圧受容体がセンサーとなって細胞外液の浸透圧を感知し、下垂体後葉からの抗利尿ホルモン=ADH=バソプレシンの分泌を調整します。ADHは腎の集合管V2受容体に結合し、細胞質内の水チャンネルを尿細管管腔側細胞膜に異動させると、強力な浸透圧勾配のために水再吸収が促進され、尿量が低下します。浸透圧受容体の刺激は同じく視床下部に局在する口渇中枢に作用して飲水行動も惹起させます
一方、頸動脈同、大動脈弓、心房、心室、傍糸球体装置などに散在する圧受容体は血管内圧を感知し、交感神経/副交感神経の緊張を制御します。交感神経の緊張は心拍出量を増加させ有効循環血漿を増加させると同時に末梢血管抵抗を増大させることによって血圧を上昇させます。
交感神経の緊張は傍糸球体装置細胞におけるレニン分泌も促進させ、ここを起点としてレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系も賦活化されます。
RAA系ではアンジオテンシンIIが強力な血管収縮作用をもたらすと同時に、その下流のアルドステロンは集合管におけるNa吸収を促進して有効循環血漿量を増加させ、この合わせ技で血圧が上昇します。
このように容量調節系は有効循環血漿、すなわち細胞外液調節がその主目的です。
これに対して浸透圧調節系は細胞外液の浸透圧を起点にして動き始めますが、細胞内液と細胞外液の浸透圧は等しいので、細胞内液・外液に通じる調整系です。このうち細胞外液は容量調節系によってきっちり制御されているので、実質的に浸透圧調整系は細胞内液を制御するためのシステムだと言っても間違いではないでしょう
建前上、浸透圧調節系と容量調節系はお互いに独立した調整系であるとされていますが、この二者は一部連携しており、完全に独立とは言えません。
- 食塩摂取と血圧の関係は?
食餌から摂取したNaの多くは細胞外液に分布し、これによって細胞外液の浸透圧が上昇するとADH分泌の促進と飲水行動の誘発によって細胞外液が増加します。この結果、圧受容体が刺激されると交感神経緊張が緩み、レニン分泌が阻害され、アルドステロン依存性のNa再吸収が停止することで利尿が進み、有効循環血漿量の低下に伴って血圧は復帰します。
この後者の反応の速度には個人差があり、有効循環血漿量が戻り切らないうちに食塩の追負荷が加わると血圧は高い領域で安定化してしまう
これが食塩感受性高血圧のメカニズムである
ただし、高血圧患者における食塩感受性高血圧の割合は高くなく、非食塩感受性高血圧の半分ほどである
尤も、食塩感受性高血圧と食塩非感受性高血圧ははっきり白黒つけられるようなものではなく、グレーゾーンの症例も多いことから、一般に集団内で食塩摂取を制限するとその集団の血圧は低下します
- 新しい高血圧の診断基準は覚えたかな?
百聞は一見に如かず、診断基準の表はよく覚えておきましょう
- 急性腎障害=AKIの定義は?
48時間以内にCrが0.3 mg/dl以上増加した場合
またはCrが「以前7日以内に判っていた前値」の150%以上に増加した場合
または尿量<0.5ml/kg/hが6時間以上継続した場合
ただし「以前7日以内に判っていた前値」は予測される基礎値で代行することも可能
- AKI症例をみたらどんな順番で対処する?
- 尿所見に基づく尿細管機能評価は?
- 高K血症、うっ血性心不全、代謝性アシドーシスなどの致死的合併症をスクリーニングし、必要に応じて対応する
- 超音波検査にて尿路閉塞(=腎後性腎不全)、腎萎縮(=慢性腎臓病)をスクリーニングし、必要に応じて対応する
- 尿量・尿浸透圧/比重、尿中Na濃度などから尿細管機能を判定する
- 尿蛋白、沈査など尿所見を評価する
特に覚えておくべきはFENa(=Fractional Excretion of Na)です。FENaはNaの再吸収効率の指標であり、FENa>1の場合はNaがあまり再吸収されていない、すなわち尿細管機能障害がある、と考えます。
一般に尿細管機能障害や尿所見異常(≒糸球体障害)が軽微であるほど腎性ではなく腎前性腎不全の可能性が高いとされています。ですが、実際には腎性と腎前性は併存していることが多く、必ずしもクリアカットに分けられるものではありません(でも国試ではクリアカットに分けられることになっています(笑))
- 造影剤腎症=CINにどう対処する?
eGFR<45 ml/min/1.73m2の症例は高リスクと考え、可能ならば造影剤の使用は回避します
高リスク症例に造影が必要な際は、等浸透圧性の造影剤を、できるだけ少量用います
検査前後に生理食塩水または重炭酸Na溶液を補液することはCINのリスクを軽減させる可能性があります(必ずしもコンセンサスはありません)
検査後に血液浄化によって造影剤を除去することはCINの発症リスクを軽減しません
高齢者、糖尿病、AKIの既往などもCINの発症リスクを増大させます
しかし、リスク因子が皆無でもCINの発症を否定できるものではありません。全ての症例に対して、CINのリスクと、そのリスクを負ってでも造影検査を行うことのメリットを十分に情報開示し、患者・家族が納得した上で検査に対して高いモチベーションで臨んでもらうよう準備することが何よりも大切です
- 尿毒物質を三種類に分けるとしたら?
透析膜を介して拡散で容易に除去できる「小分子」、拡散では抜けにくく限外濾過を強くかけないと抜けない「中分子」、分子サイズ自体は拡散でも容易に抜けるほど小さいにもかかわらず血漿蛋白と結合しているために実際には抜きにくい「蛋白結合型分子」の3つに大別できます
もともと「小分子」と「中分子」は分子サイズ10000Da程度を境界とすると認識されていましたが、昨今の透析膜はパフォーマンスが良好になり、実際は分子サイズ20000Daくらいまでは拡散で抜けるようになりました。したがって「小分子」と「中分子」の境界は不明瞭になり、実際に近年の透析患者では中分子に由来する尿毒症状は軽症化しています。一方、「蛋白結合型分子」を効率的に除去できる血液浄化療法はまだ開発されていません。
- 腸管と尿毒物質の関係は?
消化管から吸収されるアミノ酸の分解産物の中には、腎臓で排泄を受けず血中に蓄積すると毒素として作用してしまうものがあります。好例はインドキシル硫酸です。インドキシル硫酸はアミノ酸であるトリプトファンを起点とし、これが腸管細菌の作用でインドールとなり吸収されると肝臓でインドキシル硫酸となります。腎臓の機能が低下すると、蓄積したインドキシル硫酸は様々な細胞に取り込まれ、そこで酸化ストレス促進因子として作用し、臓器障害を引き起こす「尿毒物質」となります。このインドキシル硫酸は蛋白結合型尿毒素ですが、生理状態ではどうやって腎臓がこれを無毒化しているのかはまだよくわかっていません。そんなわけで、慢性腎臓病患者でも血中のインドキシル硫酸濃度を低下させる方法は確立できないままです。腸管細菌にアプローチして、前駆物質であるインドールの産生を阻害すれば良いのではないか?という意見もあります。
- トレードオフ仮説を説明できる?
慢性腎臓病によって機能するネフロンの数が減少するとしましょう。
これによって血中の25水酸化ビタミンDが尿細管で1α水酸化されなくなり、その結果、消化管Ca吸収が決定的に低下します。この結果、血清Ca濃度は低下します。
一方、ネフロン数の減少はPの排泄障害を誘発し、これによって血清P濃度は上昇します。
CaとPはいずれも副甲状腺細胞のCa感知受容体に結合しますが、血清Ca濃度の低下、P濃度の上昇はいずれもPTHの分泌を促進します。するとPTHは骨と腎臓に作用してCaを上げPを下げるわけですから、上記の変化が代償されCaとPは正常化します。
というわけで、慢性腎臓病が進行した状況では一見CaやPは正常域内に留まって見えますが、その代わりにPTHだけが上昇してしまうのです。
これがトレードオフ(=代償)のメカニズムです。
- 透析アミロイドーシスの主な臨床症状は?
Aβ2Mアミロイド線維は全身に沈着しますが、公式には透析アミロイドーシス(Aβ2Mアミロイドーシス)は局所アミロイドーシスに分類されています。運動器、特に大関節の滑膜に沈着しやすいからです。主な運動器症状として手根管症候群、透析脊椎症、骨嚢胞、関節拘縮などが見られます。破壊性脊椎関節症は透析脊椎症の一型と見なすことができます。また、骨嚢胞はしばしば脆弱性骨折の原因ともなります。
骨・関節外症状として、徐脈性不整脈、腸管運動障害、皮膚剥離、巨舌などが見られることもあります。
- 腎機能が障害されるとなぜ貧血になる?
いわゆる腎性貧血の主因は腎臓におけるエリスロポエチン分泌の相対的低下です。ただし、それは唯一の原因ではありません。腎機能が障害されると、赤血球寿命が短縮します。また、特に透析患者では、鉄も欠乏しがちです。
- 拡散効率を上げて対処すべき病態は?
拡散は濃度勾配(浸透圧勾配)を駆動力として半透膜の孔サイズより十分に小さなサイズの溶質が半透膜を通過する現象です。拡散効率を強化するということは、小分子の溶質の制御効率を上げるということですから、これが功を奏する代表はミネラル代謝異常(特に高K血症や低Ca血症)と酸塩基平衡異常(=H+の蓄積)です。
- 限外濾過効率を上げて対処すべき病態は?
限外濾過は外力を駆動力として半透膜の孔サイズより十分に小さなサイズの溶質が溶媒ともども半透膜を通過していく現象です。拡散効率を強化するということは、小分子の溶質の制御効率を上げるということですから、これが功を奏する代表はミネラル代謝異常(特に高K血症や低Ca血症)と酸塩基平衡異常(=H+の蓄積)です。溶質の調整は拡散が得意とするところですが、溶媒量を調整できるのは限外濾過だけです。したがって限外濾過効率を上げて対処すべき病態とは、溶媒=水が過多である浮腫・うっ血・心不全・肺水腫などになります。
- 血液濾過透析の仕組みを説明できる?
透析器には側面に透析液の入口と出口がありますが、ここに入ってくる透析液の速度をA、出ていく透析液の速度をBとしましょう。この透析液は血液とは半透膜(=透析膜)を挟んだ対側を流れます。このときA<Bならば透析液が半透膜を介して血液に接している、すなわち拡散が起こるだけでなく、血液側から透析液側に引っぱる外力もかかるので限外濾過も起こります。これが通常の血液透析です。ここでA<<<Bとすると血液側から透析液側に引っ張る力はより強くなり、限外濾過効率はあがります。しかし、そのままでは身体から体外循環に取り出す血液量に比べて体外循環から身体に戻る血液量が少なくなりすぎてしまうため、この状況を続けていると有効循環血漿量が減ってしまいます。そこで、透析器の前、あるいは後ろで補液を行って有効循環血漿量の維持を図るのです。この治療モードを血液濾過透析=hemodiafiltration = HDFと呼びます。ICUなどで行われる急性血液浄化療法であるCHDFも回路デザインは同じです。
- 腹膜透析の利点と欠点は?
腹膜透析は体外循環を用いません。しかも24時間ゆっくりと血液浄化を行えます。したがって体外循環や間欠的血液浄化の負荷に耐えられない重度の心機能障害患者にも適用可能な優しい治療法です。また、腹膜透析患者は導入後も尿量が減りにくいという特徴もあります。
ただし、腹膜透析の血液浄化効率は良くありません。溶質除去効率も、除水効率も、血液透析には及びません。体外循環の負荷に耐えられない重度心不全患者にも腹膜透析は適用できますが、しかし除水効率の悪い腹膜透析によってその心不全状態から脱却することは難しいのです。また、腹膜は生身の人間の身体の一部ですから、必ず劣化します。10年も継続して行うことはできません。
腹膜透析は2週間に1回くらい通院すればよいだけなので、週3回の通院を要する血液透析に比較すれば生活の自由度が高く、働く現役世代には都合が良いという意見もあります。しかし、一日に数回の液交換を必要とする腹膜透析が、必ずしも常に自由度が高いともいえません。働くためには夜間透析や家庭透析の方が便利であるという感じる人もいるでしょう。また、腹膜透析には厳しい食事制限が要らないという意見を言う人もいますが、除水効率の悪い腹膜透析ではかえって溢水を起こすリスクが高く、本当は厳しい食事制限が必要なのかもしれません。このあたりは一概に優劣関係があるとは言えないように思います。
- CaとPの代謝の共通点と相違点は?
- PTH分泌の調節機構を説明できる?
CaもPも小腸から生体内に取り込まれ、その大半は骨に貯蔵されています。Pは約85%、Caに至っては99.9%以上です。どちらも尿を介して腎臓から排泄されます。小腸からの吸収は活性型ビタミンDによって促進されます。ただし、吸収効率の悪いCaは活性型ビタミンDで後押ししないと消化管吸収が決定的に低下しますが、Pはこの後押しがなくてもあまり問題がないレベルまで吸収されます。
副甲状腺細胞などに発現しているCa感知受容体(Ca-sensing receptor = CaSR)には、CaだけでなくPも結合します。副甲状腺細胞のCaSRにCaが結合すると副甲状腺ホルモン=PTHの分泌は抑制されますが、Pが結合すると逆にPTHの分泌は促進されます。PTHは骨に作用して骨リモデリングの刺激となり、まず破骨細胞性骨吸収によってCaとPを共に骨から細胞外液に放出します。このときPTHは同時に腎臓にも作用し、Pの再吸収を抑制することでP利尿を進め血清P濃度を低下させますが、Caの再吸収は促進するので血清Ca濃度は上昇します。すなわち、PTHはストックスペースである骨からCaとPを取り出しますが、そのうちPは尿中に捨ててしまうので、結局Caだけを細胞外液に補給することになります。これはCaが低くてもPが高くても誘発される反応です。
- 高Ca血症の原疾患の鑑別は?
血清Ca濃度が異常に高くなるには、1)Caの再利用効率が異常に亢進する、2)Caの取り込み=消化管吸収効率が異常に亢進する、3)血清Ca濃度を感知するシステムが故障する、の3つのメカニズムのいずれかが原因です。
1)の代表的病態として、原発性副甲状腺機能亢進症と悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症(Humoral Hypercalcemia with Malignancy = HHM = 腫瘍から分泌されるPTHrPによるparaneoplastic syndromeの一つ)が挙げられ、教科書的にはこの2つで高カルシウム血症全体の90%を占めるとされます。
しかしわが国では2)のメカニズムを起こす活性型ビタミンD製剤の過剰使用が高カルシウム血症の第一の原因であると考えられています。他にサルコイドーシス、甲状腺機能亢進症、副腎皮質機能低下症、リチウム中毒、寝たきり状態、なども高カルシウム血症の原因となります。
なお、逆に低カルシウム血症を引き起こす病態といえば、キャラの立った劇症膵炎は和れず覚えておきたいところですね。
- CKD-MBDってどんな疾患?
腎臓は全身のミネラル代謝の要となる臓器であり、その機能を失った慢性腎臓病患者には副甲状腺機能異常、骨代謝異常、軟部組織石灰化など多彩なミネラル代謝障害が発症します。これらを総称して一つの不可分な疾患概念と捉えたものがChronic Kidney Disease-Mineral Bone Disorder = CKD-MBDです。具体的には「骨や心血管の異常を呈すに至る慢性腎臓病に伴う全身性ミネラル代謝異常」と定義され、検査値の異常・骨代謝の異常・軟部組織石灰化という3つのコンポーネントから成ります。
- 骨粗鬆症の診断基準は?
- 腰椎、股関節、橈骨のいずれかの骨密度が若年女性平均(Young Adult Mean =YAM)値の70%未満ないしは-2.5SD未満
- 脆弱性非主要骨折(脊椎あるいは大腿骨近位部以外の骨折)の既往があり、かつ腰椎、股関節、橈骨のいずれかの骨密度が若年女性平均YAM値の70%以上80%未満
- 脆弱性主要骨折(脊椎あるいは大腿骨近位部の骨折)の既往がある
上記1)~3)のいずれかを満たしたものは骨粗鬆症であると診断できる
- 転倒のリスクファクターにはどんなものが挙げられる?
サルコペニア・フレイル
神経疾患:特にパーキンソン病/症候群・レビー小体型認知症
泌尿器科疾患:特に夜間頻尿を引き起こす状態、前立腺疾患治療後
視力障害、平衡障害、貧血、不眠症・不眠治療中
不適切な履物、部屋内の整理整頓の不備、杖の不使用
- 骨粗鬆症のリスクファクターにはどんなものが挙げられる?
加齢、るい瘦、閉経後女性、慢性腎臓病、上部消化管手術後、肝硬変、糖尿病、副甲状腺疾患、甲状腺疾患、副腎皮質ステロイド治療、閉塞性肺疾患、前立腺疾患治療後、寝たきり状態、動脈硬化症(特に大血管石灰化を伴う動脈硬化)