1) Aはミトコンドリアが豊富な尿細管上皮細胞なので、腎皮質にある分節です。近位曲尿細管か遠位曲尿細管のいずれかですが、内腔に向かって刷子縁が発達しているので近位曲尿細管上皮細胞ということになります。Bは絡み合うシダの葉のような足突起が見えるので糸球体上皮細胞です。Cは細胞内に分泌顆粒が見えます。これは分泌前のレニンであり、傍糸球体装置であることがわかります。ミトコンドリアではありませんよ。以上から正解は4になります。
2) AG = Na+-(Cl- + HCO3-) = 145 – (Cl-+ 10) = 18であり、AGの正常値は10-14程度ですから、18という値は明らかに開大しています。また、式を展開するとCl- = 117という値が得られ、これもまた正常値より明らかに高値です。したがって正解は4です。なお、HCO3-が著しく低下しているのでこの症例は代謝性アシドーシスです。pCO2が低いので呼吸数は上昇しているはずです。動脈血液ガス所見から血圧は推定できません。
3) 男性のCrに基づくeGFR値は 194×Cr-1.094×年齢-0.287 (ml/min/1.73m2)と示され、女性の場合はこれに0.739の係数がかかります。すなわち、eGFRを規定する変数は、血清Cr濃度、年齢、性別の3点だけなのです。年齢・性別が同じなら、同じ血清Cr濃度の人は体格に関係なく同じeGFR値を示します。また、同じeGFR値なら、体格が大きいほど実際のGFRは高くなるはずです。同じ血清Cr濃度である場合、eGFR値は加齢に伴って低下し、また女性は男性よりも低値となります。したがって正解は1です。
4) これは日本高血圧学会診断基準2019の通りで正答は5です。III度高血圧は収縮期と拡張期のいずれかが基準を満たせば診断が確定します。なお、この診断基準では低血圧は定義されていません。
5) これもKDIGO定義の通りで、正解は3です。Cr値の上昇と乏尿・無尿のいずれかを満たせば診断確定なので、その片方が満たされないだけでは診断自体を否定できません。逆に、片方を満たしただけでも診断は確定します。
6) 透析アミロイドーシスはβ2ミクログロブリンを前駆蛋白とするAβ2Mアミロイド線維が全身に蓄積する疾患です。β2ミクログロブリンが沈着するわけではありません。また、紛らわしいですが、アルツハイマー型認知症で脳に沈着するアミロイドβとも違います。手根管症候群などの運動器症状を呈しやすいのが特徴ですが、骨・関節外にも多彩な症状をきたします。ただし、近年は減少傾向にあるという意見が主流です。正解は5です。
7) 拡散は小分子溶質濃度を調整しますが体液量は変えられず、限外濾過は逆に体液量を調整しますが小分子溶質濃度は調整できません。ですからうっ血に対しては限外濾過、酸塩基平衡障害に対しては拡散を強化するのが基本です。全身の循環動態が不安定な場合は血液浄化時間を延長して除水速度を落とします。それでもまだ危険な場合は体外循環を避け、腹膜透析を選択します。血管アクセスが不良な場合にも体外循環を避けて腹膜透析を選択することがあります。正解は5です。
8) 甲状腺機能亢進症は時に高Ca血症を誘発しますが、低下症では高Ca血症は起こりません。重症膵炎では時に重篤な低Ca血症が見られます。他は全て高Ca血症の背景病態として有名です。正解は4です。
9) CaとPはいずれも十二指腸~空腸で吸収され、この反応は活性型ビタミンDによって促進されます。ミネラル代謝のコントロールタワーである副甲状腺細胞のCa感知受容体に作用しますが、Caが作用すると結果として副甲状腺ホルモン=PTHの分泌は低下しますが、Pが作用すると逆に分泌は増加します。尿細管にPTHが作用すると、Caの再吸収は促進されますが、逆にPの再吸収は著しく抑制されます。どちらも多くは骨に局在していますが、Caは全体の99%以上であるのに対し、Pはたかだか85%くらい、すなわち骨外にもそこそこ分布しています。正解は4です。
10) 日本骨粗鬆症学会の診断基準通りです。骨塩量の情報なしで診断できるのは主要骨折=脊椎圧迫骨折または大腿骨近位部骨折のみです。骨粗鬆症診断男性の診断を行う際にも若年女性平均が比較対象値となります。以上から、正解は4となります。
11) 骨粗鬆症の危険因子はたくさんあり、るい痩もその一つですが、肥満はむしろ骨量を増やす方向に作用します。正解は5です。
12) 骨粗鬆症の誘発因子と転倒の誘発因子がいずれも脆弱性骨折の危険因子であると見なされます。正解は2です。交通外傷の多くは高エネルギー外傷ですから、通常これに伴う骨折は脆弱性骨折と見なされません。